初・東京ドーム

人生で野球を観に行った回数は二桁行くか行かないかくらい。ファンとしてはあまり多い方ではないだろう。なぜ観に行かないかというと、理由は二つある。

一つ目は、自分にとって野球を観る最大の楽しみが「配球と読みとバットコントロールのせめぎ合い」だからだ。球場で観る場合、バックスクリーンかネット裏で観ない限り横のコースは全くもってわからない*1。かといって、バックスクリーンでは遠すぎて球の伸びがわからない。ネット裏は、チケット自体が滅多に手に入らないので観に行くこと自体がまず難しい。そうなると、ショート辺りの目線で観ることができるテレビというのが、観戦においてはかなり有力な手段になるわけだ。なによりテレビ観戦の最大のメリットは、ただで観れることだ。

二つ目は、物心つく頃にはテレビで野球を観ていた生い立ち上、野球の見方がどうしてもテレビカメラの視点からになってしまっているからだ。そのため、球場に行っても勘は狂うし雰囲気に慣れてないし調子狂うしで、冷静に試合を見ることができるかどうかが極めて怪しくなる。こういうと、普段球場に通っていらっしゃる方々は「球場は応援に行くもんだろ? そもそも冷静に観ようとするからおかしいんじゃないの?」と思うだろう。確かに現状では、球場に足を運ぶほど野球が好きな方のほとんどがどこかの球団を贔屓になさっていることだろう。そうした方の立場では、「観に行く=応援しに行く」という図式が有力なわけで、別に「冷静になる」ことを重要視する必要は無いわけだ。だが、自分の場合は違う。自分の場合、普段テレビの前で身に付けた感性が現場でどのくらい役に立つものかを知るために球場に行く。正直な所、どこのチームが勝とうが負けようが、そんなことはどうでもよい。自分にとって最も重要なことは、目の前で行われているプレイの質が高いか低いかだ。くだらないエラーなど観たくない。次の塁を狙う創意工夫、投手が投げる前に打者の動きで打球の方向を予測して守備位置を変更する洞察力など、常に地道な努力と向上心と勇気によってもたらされるプレイに対して「また観たい!!」という欲望が湧き出してくるわけだ。…とだいぶ熱くなってしまったが、こんな自分に育つまでの間ひたすらテレビ観戦文化にドップリはまっていたため、今更球場で同じテンションを保てそうに無い。実際、最近数回も保てた試しがない。

今まで行ったことがあるのは、旧・ナゴヤ球場神宮球場千葉マリンスタジアムだ。そして、本日の東京ドームが加わることとなる。
球場内の物販は、このプロ野球問題さなかでも相変わらずの高インフレ率を保っていると予想して、食料品に関しては場外のケンタッキーで調達しておいた。この、ケンタッキーというのが非常によい。僕は、普段「1ドリンク付」のライブによく通うため、イベント会場に行くとアルコールが無ければやってられない質だ。この感覚、よく分からない人は騙されたと思って是非ともやっていただきたい。最高に楽しいから。で、このケンタッキーが、球場内の800円もする(高っ!!)エビスビールの肴(鶏ですが…)になるわけで。
東京ドームは、入場の際に荷物検査がある。つまりは鞄の中身を漁られるわけだ。さすがに持ち込みをいちいち摘発なんかやってらんねーから「没収!!」は無いだろと余裕シャクシャクだったが、ふいに警備員から「ちょっとすいません…」と嫌なお声が!! 同様を顔に出すまいと努めつつかなりテキトーに「はい?」と返事すると「ペットボトル・空き缶は中で紙コップに移し変えてください。」と警備員。なんだよー脅かすなよーオメー友達無くすぞーとか思いながらも無事突破。ペットの中身は面倒臭かったので飲み干してしまいました、紙コップ係の綺麗なお姉さん方、ゴミの後始末させちゃってどうもすいません、個人的には綺麗な方に処理してもらえてかなり光栄です。
球場の中に入ると、数名の選手が新潟地震の募金をしていました。その中には、日本シリーズで最も美しいプレーを乱発していたあの荒木・井端の姿も。かなり感動した。特に荒木、普通にかっこいい。コイツはかなりモテるだろうな。同性としては羨ましい限りで。募金の際に気になったのは、どこかのファンの子(小学生低学年くらい?)が、広島・西山を見て「嶋だー」とかなりでかい声ではしゃいでいたことでくらい。君、実に年齢相応な間違いではあるが、西山と嶋は明らかに違うよ。早くメガネを買いに行きなさい。
着席。席は、バックネットと一塁側のネットの丁度繋ぎ目の部分だ。全体に前寄りで、かなりいい席だと思う。今日行こうと判断した材料の一つに、席が抜群に良いということが挙げられる。なんせ、座席のランク最高の「S」が3000円だ。つまり、3000円払った奴は指定席以外はどこにでも行っていいことになる。これはかなり破格だと思う。今日び、インディーズのライブでもジャズのマイナーなライブでもアバンギャルドな即興のライブでも最低3000円は覚悟しなければならない。これに、さらにドリンク別の場合は、前述の理由でさらにアルコール代が自動的に発生する。以前興味本位に調べた「モーニング娘。」のライブ(コンサートと言うべきか?)は、彼女らの汗も涙も見えず彼女ら自体がゴマ粒程度にしか観れない席(しかも指定だったりする)で3000〜4000円、前方の屈強なガードマンどもに視界を遮られた席などはなんと9000〜円だ。上限は知らない。知る気も無いし。ま、その辺と比べれば非常にお得な話だ。これくらいの待遇なら年に何度でも行きたい。来年だったら楽天も観たいし。一緒に行った友人は、西軍・山本監督や東軍・伊藤監督をスポーツ観戦向けの高価なデジカメでバッチシ撮っていた。そいつらを撮ってもあまり意味は無いと思った。
試合が始まるまでかなり時間があって暇だったので、トイレや球場内を見て回ることにした。どうせ友人は写真撮影で話も聞いてくれないだろうから。トイレは非常に綺麗。トイレというのは、その施設管理者の運営姿勢が如実に現れるところ。トイレというのは基本的に汚れるものだが、生理的に利用しなければならない。利用するにあたって、汚いものは使いたくないのが人情だ。汚い仕事をしたくないのも人情だ。その中で、顧客を大事にするのであれば、部下に嫌われてでもトイレを綺麗にさせなければならない。部下がやってくれないなら自分でやるくらいの気概が必要だ。顧客への意識が薄い官僚的な人は、その精神的な弱さから同僚にヘツラって掃除をさせなかったりする。それは、その組織全体の損失だ。それがわからないリーダーの元にいることは、同僚にとって損失になり、組織は弱体化して…。と、これについては、東京ドームは綺麗だったので良かったと思う。さすがは人気球団のフランチャイズだ。
よく巨人の左バッターが打球を放り込む3階席とやらに行きたかったが、警備員に止められた。残念。付近にいる案内係の女性方をよく見ると、なんとなくバスガイドな制服を着ている。球場でバスガイドが迷子のお守りをしているわけだ。
そんなこんなを見学しつつ球場を一周しているうちに試合前のイベントが終わった。イベントはあまりしっかり見れなかった。山本昌が質問に対してダルそうに受け答えしていたのは覚えている。
で、試合開始。試合は…TV観た人はご存知と思うが、さきほどの昌の受け答えに勝るとも劣らぬほど、などと言うといろんな意味で失礼だが、まー一言で言うところの「緊張感が無かった」だ。そりゃそうだ。ペナント・日本シリーズと長い戦いが終わって身も心もボロボロ、「これからオフだぁぁぁぁー!!」と思ったら日米野球があってちょっと気が抜けない、調整大丈夫か?と思っているところへファン感謝デー・東西対抗だ。こんな場面でも「気合入れろっ!!」と言えるのは日本中にアニマル浜口ただ1人だ。
簡単な感想を。西武・松坂の球は本当に速い。横浜・吉見は凄い投げ方をする。西武・和田の打撃は横から見ると非常に美しく理にかなったフォームに見える。ロッテ・小阪は巧かった。中日・荒木はとんでもなく巧かった。ゴールデングラブ、実に納得。
試合の途中で選手がサインボールを投げ込むイベントがあった。松坂のボールが僕の方に飛んできたが、後ろから押し(やがっ)た奴のせいで手の土手に当たり、どっかにやってしまった。うぅ。
試合はすごくサクッと終わってしまって時間つぶしに困ったので、行きがけの駄賃(?)で東京ドームの近くにあるバッティングセンターに殴りこんだ。まではいいものの、そこで「桑田マシーン」に往年のストレートをコーナーに集められ、三振の山を築かされてしまった。腹が立っていた最後の1球は待ちに待ったジャストミート、文字通りのピッチャー返しとなってライナーで桑田の股間に直撃!!(←ま、あくまでも映像上ですが)三振の屈辱を下ネタの屈辱で返してやりましたとさ。でも本物の桑田の場合は、もの凄く何気ないピッチャーライナーにされそうな気がしてさらに鬱になる。

*1:ダッグアウト裏付近は高低と球の伸びが非常によくわかるメリットはあるが