隣の成果主義

隣りの成果主義 (ペーパーバックス)

隣りの成果主義 (ペーパーバックス)

以前購入した、「内側から見た富士通成果主義』の崩壊」id:zenkakuKANA:20041106の続編のようなものだ。前作があまりに評判だったため(内容の良し悪しは別として)、とりあえず第2弾も作ってみた、というのが真相なのじゃないだろうか。
文章の調子は相変わらずだ。例の「中途半端な英単語挿入(pyon3氏より引用)」はご健在のご様子。もっとも、これに関しては光文社ペーパーバックス2冊目ということで幾分か慣れていたため、あまり気にせず(むしろ無視)読むことができた。以前「内側から見た〜」について書いた際、はてなダイアリーの他ユーザがどういった感想を持ったのか気になっていろいろ読ませてもらったが、かなりの確率でこの「光文社曰く『日本語表記の未来型』」に対するブーイングと対面したものだ。そしてその続編も同じ調子とあっては、これはただ事では済むまい。光文社は下手に注目を集めてしまったがために、今後は続刊の編集に際して困難な舵取りを要求されることになるのではないか。
文章の構成も相変わらずだ。1主張につき1弁護必携、そして時折思い出したように主題の自己弁護を挿入する文章構成。まるで、絶えず揚げ足取りに恐怖しているかのように自信なさげな主張で、鬱陶しい事この上ない。この出版社は日頃からそういう読者を相手にしているのだろうか。どうもその手の「癖」を感じる。
内容についてだが、収穫と感じたのは次の一点だ。
 ・経団連など経営サイドの動きを観察した上で成果主義を「今後の主流」とした点
 ・扶養控除の撤廃などから国を挙げての「結果の平等⇒機会の平等 へのシフト」
  が背景にあるとした点
ただ、これらについても若干説得力に乏しいように感じる。経営サイドが成果主義導入に踏み切った要因を「景気が右肩上がりではなくなったから」としたが、別に昇給幅が大きすぎなければ、定期昇給でもコスト増に苦しむことはない。本書ではたびたび定期昇給について「存続か撤廃か」で論じているが、コストが数値である以上それは程度問題であることに注意しなければならない。定期昇給自体が悪いのではなく、定期昇給の上昇幅が過大であることが問題なのだ。経営サイドは、今後社会人になる世代が現役世代より昇給幅を狭められることに対して白けてしまう事を、危惧しているのではないか。そして、それを未然に防ぐ段階として、現役世代に成果主義という名の減給制度を導入し、世代間格差の可能な限りの是正に取り組む。その後は、昇給幅の少ない定期昇給制度を導入する。このような仮説も可能ではないだろうか。
本書は「成果主義は一部の特別な評価制度で、諸外国でも一般的な勤務形態では用いられていない」とする説を展開しながらも、「成果主義は今後の流れだ」という主張も行なっている。これはどういうことなのだろうか。

などと長々と書いたが、いろんな事例が載っているので参考程度には良いだろう。ただ、各事例は主張者の意図に合わせて書かれているため、その分は差し引いてお読みになるのが良いと思う。

今後、暇があったらまた読んでみようと思う。当分読むことはないと思うが。

今回、僕は光文社ペーパーバックスの他の出版物を見てみたが、ちょっと社の姿勢に疑問を感じざるを得ないものがあったように思う。中身をじっくり見ていないためにタイトルや走り読み程度による判断だが、あまり良い気分はしなかった。日本国が経済崩壊して南米のような国になってしまうだとか、ヤクザに国を潰されるだとか、微妙なものである。読了者は是非感想を寄せていただきたい。