養老孟司の“逆さメガネ”

養老孟司の“逆さメガネ” (PHP新書)

養老孟司の“逆さメガネ” (PHP新書)

僕は、養老孟司さんの本が結構好きなので何冊か持っている。彼の本の良いところは、普通なら混乱して頓挫する(または時間が無くてできない)ような「原理・原則まで立ち返っての論理再構築」をしっかりやった上で現代の諸問題に対して一つの見方(考え方ではないところに注目)を提示してくれるところにある、と僕は考えている。
本作は、彼の教育論(?)に対して一冊の大半をかけている点では割と珍しいのではないだろうか。他の本で、教育のみ論じているものがあるのなら別だろうが。僕が読んだ本のほとんどは、彼独特の「脳化社会論」についてのものだったように思う。
本作の要点はこんなところだろう。
 ・共同体の機能主義・効率主義(その成れの果てを「都市」という)によって
  「機能的」ではない子供たちが問題視されている(身近な例が「教育問題」)
 ・未来予測:学問における「分析」から「生成」への反動的変化

いつもながら平易な表現だが、それで入り組んだ課題を論じきる辺りは見事なものだ。これが、教授というどっちつかずの仕事を最高学府で定年近くまで勤めてきた方の力なのだろうか。