吾妻ひでお「失踪日記」

失踪日記

失踪日記

当事者というのは、事に対して主体的にならざるを得ない。当事者なんだから。当事者は主観的にならざるを得ない。これは当たり前なことなんだけど、逆にその反対のことを平然とやってのける人間が目の前にいたら、相当にキモく感じるだろう、僕だったら。
中途半端にオルタナ気取っている人や自分に自信を失っている人にはぜひ読んで欲しい一冊。僕は本気で自殺しようと思ったことは一度も無いけど、多分自殺しようと考えている人がこれを読んだら自殺する気無くすように思う。それ系の推進力を破壊する本だから。誰もが死を連想してしまいそうなシチュエーションの連続ながら、死の色とは正反対の、対称色で構成された視点を提示する…
なんて雑誌の評論チックに書いたけど、そんなことは全部どうでもよくて。普通に面白い。著者のファンじゃなくても楽しめる。本作で著者のことを初めて知った僕でも楽しめたんだから。